外務大臣の死
小酒井不木

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)居室《きょしつ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)十分|腑《ふ》に落ちなかった。

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き](「苦楽」大正十五年二月号)
−−

       一

「犯人は芸術家で、探偵は批評家であるという言葉は、皮肉といえば随分皮肉ですけれど、ある場合に、探偵たるものは、芸術批評家であるということを決して忘れてはならぬと思います」と、松島龍造氏は言った。
 晩秋のある日、例の如く私が、松島氏の探偵談をきくべく、その事務室を訪ねると、ふと英国文豪トーマス・ド・キンセイの、『美術としての殺人』という論文が話題に上り、にわかに氏は、その鋭い眼を輝かせて語り出したのである。
「あなたは、無論、エドガア・アラン・ポオの『盗まれた手紙』という探偵小説を御読みになったことがありましょう。フランスの某国務大臣が、皇后の秘密の手紙を盗んだので、パリー警察の人々は、一生懸命になって、大臣の居室《きょしつ》の隅から隅まで探したけれど、どうしても見つ
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