「どちらか」は底本では「どちから」]一人が白金を飲んでいるかもしれません。私は早く岡島先生の検査の模様が見たいものと、自動車の走るのさえ、もどかしく感じました。
不思議なお茶
読者諸君、諸君はエックス光線で身体の内部を検査するところをご覧になったことがありますか。それを行うには検査台の上に人を立たせ、後ろからレントゲン線で照らし、前にシアン化白金バリウムの盤をあてて見るのです。
シアン化白金バリウムは、レントゲン線にあたると蛍光を発します。レントゲン線は衣服や筋肉は通過しやすいですが、金属や骨は通過しにくいですから、これらは影となって盤の上にあらわれるのです。ですからもし、木村さんか竹内さんが白金をのみこんでいたら、必ずその影が見えるはずです。
ところが、岡島先生が熱心に検査せられましても、白金らしい影は二人の身体に見えませんでした。
「俊夫君! お二人とも飲んではおられないよ」
と先生は真面目な顔で申されました。
「どうも有り難うございました。それで安心です」
と俊夫君はさも安心したように、にこにこ[#「にこにこ」に傍点]して答えました。私はすっかり予期がはずれた
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