思うのは、見なければならぬ理由があるからです。これから駿河台の岡島先生のところへ行って、二人の身体をエックス光線でみてもらいますから、すぐ自動車を用意してください」
俊夫君の言葉がいかにもハキハキしていたので、木村さんは何も言わずにおばさんを近所の自動車屋へ走らせました。私は俊夫君の命令で岡島先生へ電話をかけました。まだ夜が明けぬ前でしたが、先生はいつ来てもよいと快く返事をしてくださいました。岡島先生は医学博士で、俊夫君が先生について医学を修めたときに我が子のように可愛がって教えてくださった人で、俊夫君のことなら、どんな難題でも聞いてくださるのです。だから、俊夫君は先生のご都合を聞かぬ先に自動車を用意させたのです。
やがて自動車がきましたので、私たち四人は人通りの少ない黎明《れいめい》の街を駿河台さして走りました。四人はとかく黙りがちでしたが、中でも竹内さんはにが虫をつぶしたような顔をしていました。
私は自動車にゆられながらいろいろ考えました。俊夫君が申しましたように、エックス光線にまでかけて検査するには、それだけの理由がなくてはなりません。すると木村さんか竹内さんかどちらか[#
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