暗夜の格闘
小酒井不木
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)白金塊《はっきんかい》の紛失
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)時々|睨《にら》む
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)はっ[#「はっ」に傍点]と思って
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白金塊《はっきんかい》の紛失
紅色ダイヤ事件の犯人は、意外にも塚原俊夫君の叔父さんでしたから、悪漢の捕縛を希望しておられた読者諸君は、あるいは失望されたかもしれませんが、これから私のお話しするのは、先年来、東京市内の各所を荒らしまわった貴金属盗賊団を俊夫君の探偵力によって見事に一網打尽にした事件です。
十月のある真夜中のことです。正確に言えば午前二時頃ですから、むしろ早い朝といった方がよいかもしれません。一寝入りした私は、はげしく私たちの事務室兼実験室の扉《ドア》を叩く音に眼をさましました。
「俊夫さん、俊夫さん」
と女の声で、しきりに俊夫君を呼んでいます。私が、
「俊夫君」
と言って、隣の寝台《ベッド》に寝ている俊夫君を起こすと、
「知っているよ、ありゃ木村のおばさんの声だ」
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