よ」
「だって、私が盗むわけもないし、竹内だってもう半年もいて、正直なことは保証付きの人間ですから、それはやられるまでもないでしょう」
 俊夫君はむっとして言いました。
「身体検査がいやなら、僕はこの事件から手を引きます。警察の人にやってもらってください」
 木村さんも、竹内さんも仕方なしに俊夫君に身体検査を受けました。ことに竹内さんは嫌な顔をしました。すると俊夫君は意地悪くも、馬鹿丁寧に、竹内さんの洋服のポケットをいちいち調べました。しかし白金の塊は木村さんからも竹内さんからも出てきはしませんでした。
「これで身体《からだ》の外側の検査が済んだから、今度は中側です」
「え?」
 と言って木村さんはびっくりしました。
「中側の検査とはどういうことです?」
「白金の塊は細かにすれば飲むことができますよ。だから身体の中へ隠すことができるのです」
 木村さんはあきれたような顔をしましたが、
「すると、腹をたち割って検《しら》べるのですか」
 と冗談半分に言いました。
「木村のおじさん!」
 と俊夫君は真面目な顔をして言いました。
「冗談はやめてもらいましょう。僕が身体《からだ》の中を見たいと
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