の車に乗りました。車は品川の方をさしてずんずん走り、私は車のあとからついて走りました。
それから品川を過ぎ、大井町を通って大森の△△まで行きました。あまり遠かったのでずいぶん弱りましたが、ついに車は畑中の一軒家の西洋造りの家の前でとまり、竹内は行李と土瓶とを家《うち》の中に運び入れて車をかえしました。私はしばらくその家の様子を伺っていましたが、家の中には誰もいないように思われました。
近所で聞いてみると、誰もどんな人が住んでいるかは知らないけれど、夜分になると男が五六人集まってきては、西洋館の階下の隅にある室《へや》で、化学実験のようなことをするということでした。そこで私はとりあえず、品川署へ電話をかけて二人の角袖《かくそで》巡査にその家の見張りをさせ、ひとまず帰ってきたのでございます」
「それはご苦労様。それじゃ、やっぱり夜分でないと、あげる[#「あげる」に傍点]ことはできないねえ、まあゆっくり休んでくれたまえ」
と小田さんは言いました。
波多野さんが出てゆくと、小田刑事は俊夫君に言いました。
「俊夫君、いま聞いてのとおりだから、今夜七時にここで勢揃いして、八時頃にむこうに着
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