くことにするが、その間君たちはいったん帰って、また出直してきてくれるか、それとも少し長いけれど辛抱して待っていてくれるか?」
 俊夫君が木村さんに都合を尋ねると、木村さんは、竹内から白金を取りかえすまでは、うちへ帰りたくはないと言いましたので、私たち三人は警視庁に止まって、六時間ばかり待ち合わせることにしました。
 待っているということは、ずいぶん骨の折れることです。こういうときに限って時計の針の動きがいつもより遅く思われます。やがて四時になったとき俊夫君はとつぜん私に向かって言いました。
「兄さん、僕これからちょっと用事があって出かけてくるから、おじさんの相手をしてあげてください。六時までにはきっと帰ってくる」
 こう言ったかと思うと、俊夫君は、呆気《あっけ》にとられた私たち二人を残して、つかつかと走りだしていきました。
 退屈な時間もとうとう暮れて六時になりました。あたりは少し薄暗くなったかと思うと電灯がつきました。すると約束どおり、俊夫君がにこにこして私たちの室に入ってきました。
「兄さん、いまPのおじさんに会ったら、今夜は兄さんに大いに活動してもらわねばならぬから、うんとご飯を
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