……おや、もう警視庁へ来ましたよ。そのことはあとでゆっくり話しましょう」
こう言ったかと思うと、俊夫君は自動車の扉《ドア》をあけて、さっさと出てゆきました。
警視庁には俊夫君がPのおじさんと呼ぶ小田刑事がおられて、私たちをにこにこした顔で迎えてくださいました。俊夫君は小田さんと二人きりで、しばらくのあいだ何やらぼそぼそ話をしておりましたが、それがすむと、ちょうど昼飯《ひるめし》時だったので、私たちは小田さんといっしょにうどん[#「うどん」に傍点]のご馳走になりました。木村さんは相変わらずぼんやりしていましたが、俊夫君は快活にはしゃぎました。
食事がちょうど終わった時、小田刑事の部下の波多野さんが角袖《かくそで》でふうふう言って入ってこられましたが、私たちの姿を見てちょっと躊躇《ちゅうちょ》されました。すると小田さんは、
「波多野君、この人たちは、みんな内輪だから、かまわず話してくれたまえ」
と言われました。
「仰《おお》せに従って新堀町の八百屋を見張っておりますと、竹内は土瓶を持って帰りましたが、三十分ほど過ぎると、人力車が来まして、竹内は行李《こうり》とその土瓶を持って、そ
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