落ちていた破片の方が中に落ちていた破片より沢山あったのです。だから、あの硝子は中から破ったものだと知ったのです。
中から破ったものだとすれば、破ったものは竹内より他にありません。すると白金は竹内が盗んだにちがいないが、さて、一体どこに隠しただろうかと、僕は一生懸命に引き出しをあけたり棚の上の器の中を検べました。
ところがどこにも見当たらなくて、とうとういちばんしまいにまさかと思って土瓶の蓋をとったら、妙な香《におい》がぷんとしました。はっと思って僕は考えたのです。室《へや》の中の麻酔剤の臭いは、この土瓶の中の液体の臭いをまぎらすためだ。白金はこの土瓶の中に隠されてある。
こう思ったけれど、あの場合それを言いだしたら竹内がどんなことをするかもしれぬ。そこで僕はおじさんに『誰の飲むお茶ですか』と聞きました。するとおじさんより先に竹内が返事をしました。だから僕はいよいよ竹内が犯人だと知って、エックス光線をかけにいってもらったんです」
「え?」
と木村さんは不審そうな顔をして尋ねました。
「白金が土瓶の中にあったなら、エックス光線をかけるに及ばぬじゃないですか?」
「それはそうだけれど
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