と木村さんは果たして、真っ青な顔をして出てきました。
「俊夫さん、どうしよう。八百屋のお上《かみ》さんに聞くと、竹内は今朝《けさ》急に引越しをすると言って、行き先も言わずに、荷物を持って出ていったそうです」
「おじさん、まあ心配しなくてよい、竹内の行った先はちゃんと分っているから、白金は大丈夫とりかえせます。さあこれからこの自動車で警視庁へ行きましょう」
「警視庁?」
と木村さんは眼を丸くして言いました。
「そうです、ことによると竹内はもう捕まっているかもしれん」
木村さんの顔に、はじめて安心の色が浮かびました。
自動車が芝公園にさしかかったとき、木村さんは俊夫君に向かって尋ねました。
「俊夫さんは、どうして白金が土瓶の中の王水《おうすい》にとかしてあることを見つけたのですか?」
「ああ、そのことですか、それじゃこれから僕が探偵した順序を話しましょう。まず工場の床の上には、外から入ったらしい人間の足跡が一つもありませんでした。
それから、あの硝子《ガラス》の破片《かけ》です。外から破ったのなら、中の方にたくさん破片がなくてはならぬのに、よく検《しら》べてみると、外の芝生の上に
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