はそういう人間が好きであって、むしろ、彼等に近づき得ないのが悲しいといった方が適当かも知れない。
二
ヂュパンやホームズが、近づき難い人間であるに反して、瑞典《スエーデン》の作家ドウーゼの創造した素人探偵レオ・カリングは、いかにもなつかしみを感ぜしめる人物である。彼は永久に書生肌の抜け切らぬ男である。そうして彼は読者のすべてを自分の親友としなければ気が済まぬといったような男である。ドウーゼの小説を読んでいると読者はカリングと一しょに仕事をしている気になり、ややもすると、カリングと同じ程度に事件を解決することが出来そうに思われて来る。それでいてやはり、最後に至ると、カリングに一歩先んぜられてしまう。ホームズやヂュパンには読者は到底ついて行くことが出来ず、いわば「先達《せんだつ》は雲に入りけり」の感があるが、カリングと歩いていると、どうかすると自分の方が先になれそうに思えることがある。この点がカリングの徳であると同時に、ドウーゼの小説の優れているところでもある。
アルセーヌ・リュパンにもこうした点がないでもないが、やっぱり近づき難いところがある。リュパンもカリングも愛
前へ
次へ
全8ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング