国心が強いが、リュパンの愛国心とカリングの愛国心とを比べて見ると、カリングの愛国心が私たちの持つ愛国心に一致し易《やす》い気がする。ドウーゼの小説でカリングの愛国心が露骨に描かれているのは、「夜の冒険」と、「スペードのキング」とであって、この二篇を読めばよくわかる。
 ホームズやヂュパンとちがって親しみ易いとは言っても、カリングが推理や観察の力に於て、彼等に劣っているという意味では決してない。彼は自分の鋭い観察力によって発見した「クリュー」を、読者に惜し気もなく示してくれるために、彼の鋭い観察力が特に目立たぬという迄である。彼はよく考え、よく想像力を働かせるが、決して thinking machine ではなく、どこまでも thinking man である。情にも動かされるし、恋もする。この点が所謂《いわゆる》「探偵型」にはまっていないかも知れないが、そのために、私たちに親しみを持たせることは事実である。
 ガボリオーの書いたルコックは変装が非常に巧みであるが、カリングもまたルコックに劣らぬ変装好きである。変装の好きなということは冒険好きであることを意味し、これまた、若い読者に親しみを
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