間となりました、彼は出獄と同時に多少の考案を持て来ることは疑ひないので、我等も夫れまでに出来得るだけの準備をして見る積りです、同志諸君、読者諸君に於ても本紙の体裁、材料、其他主義拡張に就ての良法名案あらば、ドシドシ御教示を願ひたい。
 廿四日の大雨の中を、蓑笠の百姓が数名本社に這入つて来るので、出て見ると後には巡査が付添ふて居ました、是は鉱毒被害民が惨状を訴へに来たのです、先日来二百余名の被害民が上京を企てたが、皆な警官に追散らされたさうです。
 鉱毒被害民は今や殆ど其生活の権利をすらも失つて居ます、そして之を訴ふるの手段も杜かれて仕舞つたのです、彼等は法律と警察とに保護せられずに却つて之が為めに苦しんで居るやうです、別項西川生の廃村の記を御覧下さい。
 併し警官とても何も彼等をイヂめる積りでは無論ない、雨中を蓑笠で行く百姓の姿も憐れなら、上官の命令で夫れを警護して行く巡査も気の毒である。
 先日提灯行列の惨事の翌夜、晩餐後の散歩に西川生石川生と三人で馬場先門へ行て見ると、十数人の巡査が同所を警護してヤカましく言て居る、往来の人々は大分彼等を罵つて居たやうだが、我等は同情に堪へなかつた
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