事になったゞから、前々《めえ/\》通り管理していてくんろっていって来ましたゞ。それからハア、もう二年にもなりますだが、来たのは昨日さ初めてゞごぜえますだ」
「初めて別荘に来て、すぐ死ぬとは気の毒な人だねえ」
「全くでごぜえますだ」
 お徳がそういって相槌を打った時に、お徳の亭主の竹谷義作《たけやぎさく》が紙片《かみきれ》のようなものを手にして、頭をふり/\やって来た。何とも訳が分らぬという顔つきだった。彼はお徳を見ると叫んだ。
「オイ、お徳よ。俺《おら》ア、丸で狐に撮《つま》まれたようだよ」
 そういって手にした紙片を出したが、それは電報だった。
「どうしたゞかよ」
 お徳は何か恐いものでも取るように、オズ/\と電報を受取ったが、すぐ大きな声を出した。
「ひゃア、こ、これは、あんちゅう事だ」
 寺本医師が電報を覗き込むと、
[#天から2字下げ]ナニノマチガイカ オバマシンゾウハイキテイル ヨクシラベコウ
「うむ」寺本医師は唸《うな》った。「じゃ、この死んでいる男は小浜信造じゃないのだな。之《これ》アいよいよ警察の仕事になって来たわい」


          鳶《とび》色の洋服

 所
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