って調べるから」
 と、信造は見る/\額に膏汗《あぶらあせ》を流して、フラ/\と刑事の肩に凭《もた》れかゝった。


          三つの理由

「死んだのはやっぱり信造だったんですよ」
 望月刑事は司法主任の榎戸警部に稍々《やゝ》得意そうに話していた。
 警部は感嘆したように、
「一杯食わされていたのか。然し、君はよく発見したね」
「偶然、全く偶然でした。渋谷の道玄坂で、ふと信造を見かけたのですが、奴がむつかしい連珠の問題を訳なく解いたので、ハッと気がついたのです。何しろ、信造という男は人嫌いの変り者で勝負事なんか一切やらない筈なんです。それに反して、卓一は何にでも手を出す男で、事件の起った時も連珠に凝っていたといいます。――信造が連珠! 可笑しいなと思った途端に、ふと思い出したのは先達《せんだって》の信造の態度でした。交際嫌いの変り者だというのに、実によくペラ/\とよく喋りました。その時はつい気がつかないで見過していたのですが、急にその事が頭に閃めいて――」
「然し、それだけでは十分じゃない――」
「えゝ、ですから試みに卓一と呼んで見ると、ぎょっとしたようでしたから、隙《す》
前へ 次へ
全31ページ中27ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング