て見ようか」
「へえ、どうぞ」
連珠屋は鴨が来たとばかり、手にした木製の黒石を信造に渡した。
パチリ。
信造の打った所は急所らしかった。
連珠屋はうむと唸って、じっと盤面を見つめたが、パチリと白を下した。
パチリ、二つ目の黒石で、見事に四々が出来た。
「旦那、大した腕ですなア」
連珠屋は渋面《じゅうめん》を作りながら、信造を賞讚した。
信造は得意そうにニヤリと笑って、そのまゝ列を離れて、さっさと行こうとした。
と、この時に、咄嗟に望月刑事の頭に閃めいたものがあった。
刑事は自分の考えにぎょっとしながら、早足に信造を追って、背後《うしろ》から、
「北田さん、卓一さん」と呼んだ。
信造はぎょっとして振り返ったが、ジロリと刑事の顔を見ると、そのまゝ行こうとした。
「もし/\、北田さん」と刑事は追|縋《すが》った。
「人違いだ」
信造はそういって、ドン/\行こうとする。
「待って下さい。待てといったら待たないか」
刑事のきっとした声に、思わず立止った信造の耳に、望月刑事は低声《こゞえ》でいった。
「信造だなんて胡魔化しても駄目だぞ。お前は北田卓一だ。一緒に来い。指紋を取
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