分で狂言を書いて、誠しやかに僕達に話しやがった。自作自演と云うやつだ。畜生!」
「ちょ、ちょっと待って呉れ給え」津村は漸《ようや》くの事で口を出した。「星田が京子を毒殺して死体を鎌倉に運んだと云う事は、最早疑う余地はない。考えて見ると、脅迫状云々も彼のトリックだし、博覧会場へ僕達を誘き出したのも彼に違いあるまい。だが、あの時に真弓さんと自動車に同乗して、東京駅に行った男は一体何者だ。いくらなんでも、あの男は星田じゃないぜ。あの時に星田は僕達の車にちゃんと乗っていたんだから」
「そうだ。真弓さん、あの男は何者ですか。そうして、あの時に二軒ばかり店屋に寄ったのは何の為でしたか」
「あの時には何の為だか分りませんでした。私は只恐ろしい男の命令で、云うままの事をしたのに過ぎません。でも、後で考えて見ますと、銃砲店や、医療機械店で受取ったものは、みんな殺人の証拠品に違いありません」
「え、殺人の証拠品!」
「ええ、私はアノ恐ろしい男のやり方はよく知っています。アノ男は自分の身体につけたり、家に置いとくと危険だと思うものは、方々の店でちょっとした買物をして、その時に、直ぐ貰いに来るからと言って、紙
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