の廻りに置いているでしょうか。もし、縛ったり、家宅捜査をしたりして、書類が出て来なかったら、シムソンは何と云うでしょう。それこそ、どんな逆捻《さかね》じを食っても仕方がないではありませんか。
 つまり、問題は盗まれた秘密書類がどこに隠されているかと云う事です。シムソンを縛って調べた所で、易々《やすやす》と云う気遣《きづか》いはありません。仁科少佐の任務はシムソンを縛る事よりも、どこに書類があるかと云う事を見つけて、一刻も早くそれを取り返す事にあるのです。
「シムソンは無論どこか安全な場所に書類を隠しているに相違ないのだ」谷山大佐は云いました。「彼は我々がきっととり返しに来ると思って、暫《しばら》くは様子を覗《うかが》っているに違いない。しかし、ぐずぐずしていると、彼は書類を隠し場所から取り出して、本国へ送るだろう。そうなっては大変だ。だから我々は出来るだけ速《すみや》かに隠し場所を発見して、取り戻さなければならないのだ」
「承知しました。誓って速かにとり返します」
 仁科少佐は決心の色を現わして、きっぱり云いました。谷山大佐は満足そうにうなずきながら、
「ぜひ成功してくれ給え。いや、君
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