しながら何度も釦を押し直しました。
 道雄少年は蒼白い顔をしながらも、クックッと笑い出しました。
「呼鈴の線は僕が切っておいたから、鳴りっこないさ」
「な、なんだって。電線を切るとはけしからん」
「ついでに、地下室の水を出す仕掛の電線も切っておけばよかったのです。つい、気がつかなかったものだから、残念な事をしましたよ。」
「馬鹿な事を云え。地下室の方の電線はうまく隠してあるから、君なんかに気はつかないよ。ソーントンが来なければ仕方がない。私が連れて行く。さあ立て、立って地下室へ来い」
「地下室に連れて行ってどうするのですか。お父さんと一緒に水攻めにして殺そうと云うのですか」
「殺しはしない。水は間もなく止めるよ。私は人を殺すのは嫌いだ。けれども、君達二人は私の邪魔をするから、二三日地下室の牢へ入れておくのだ。二三日のうちには、秘密書類は無事に仲間の手から本国へ送り出される筈だから」
「その為なら、私達を地下室へ監禁する事は無駄です」
 道雄少年はきっぱり云い放ちました。シムソンは不審そうに、少年の顔を穴の開くほどみつめていましたが、
「それはどう云う事かね」
「書類は今頃はもう取り返さ
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