れた筈です。先刻《さっき》あなたはお父さんに、麹町郵便局に留置《とめおき》にしてあると云いました。僕はそれを部屋の外で聞いていましたから、あなたが窓の所を見に行った時に、この部屋に入って、その卓上電話で報告しておきました」
思いがけない道雄少年の言葉に、シムソンは顔を真蒼《まっさお》にして、のけ反《ぞ》るように驚くだろうと思いましたが、意外、彼はカラカラと笑い出しました。
「アハハハハ、ハハハハ」
電話の計略
「何を笑うのです」
道雄少年は突然笑い出したシムソンの顔を、呆《あき》れたように見守りながらとがめました。
「アハハハハ」シムソンはなおも笑いながら、
「君は私が先刻《さっき》本当の事を云ったと思っているのかね。麹町郵便局に留置《とめおき》にしてあると云うのは、出鱈目《でたらめ》なのだ。アハハハハ。君が本気にしたのは気の毒だったねえ」
「なあんだ」道雄少年はがっかりしながら云いました。「出鱈目だったのか」
「ハハハハ、大そう力を落したね」シムソンは、なぶるような口調で、「では、君にだけ本当の事を教えてやろうか。先刻はつい君が聞いている事を知らなかったので、もし本当の
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