階段にはキラキラと日が当っていた。あたりには誰もいなかった。
森君は階段を上って、お堂の中を覗《のぞ》き込んで、廻郎を歩き廻って下へ降りて、今度はお堂の廻りをグルグル歩き初めた。さっきからついて来た二匹の犬は、馴《な》れた場所だと見えて、大はしゃぎで、飛びついたり一緒に転んだり、追い駆け廻したりしていたが、そのうちに一匹が勢《いきおい》よくお堂の下に飛込むと、後の一匹がその後を追って縁の下に消えた。暫くすると、二匹が又勢よく飛出してきた。
森君は暫く犬のふざけているのを見ていたが、又お堂の上に昇った。そうして何と思ったのか、蟇口《がまぐち》を取り出して中から五十銭銀貨をつまんだかと思うと、廊下の隙間から縁の下へポタンと落した。そうして、しまったと云いながら、(その癖《くせ》森君はニヤニヤ笑っていた)急いで下に降りて縁の下に潜り込んだ。
僕は何の事だか訳が分らないので、ボンヤリ立って縁の下の方を眺めていた。
森君は、余程奥の方にはいり込んだらしく、少しばかり外に食《は》み出していた靴の先もやがて見えなくなった。
すると、この時に背後《うしろ》の方に人の足音がしたので、僕は吃驚《
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