匹少し大きい茶の斑《ぶち》の強そうな犬は、わんわんと吠えて、中々傍へ来そうになかったが、森君は例の可愛《かわい》い白い犬を囮《おとり》にして、とうとう傍に来させて捕まえた。前脚をあげると、その犬にはベットリと例の赤黒いものがついていた。
森君が余り自由に犬を扱うので、面白くなったと見えて、さっきの女の子が又傍に寄って来た。森君は白い犬を指《さ》しながら訊いた。
「これ、どこの犬?」
「藤山さんとこんだ」
「これは」森君は茶の斑犬《ぶちいぬ》を指した。
「お寺んだ」
「お寺? どこにあるの」
「この先の大きな銀杏《いちょう》のあるお寺だあ」
森君は犬を放して起上《おきあが》った。
「風岡君。お寺へ行って見ようや」
二
僕達は大きな銀杏《いちょう》の木を目当にお寺に行った。白と茶斑の犬はジャレながらついて来た。
見上げるような大きい太い銀杏は墓場を仕切っている土塀《どべい》の傍に突立っていた。土塀は大方崩れかかっていた。墓場から少し離れた所に本堂があった。本堂は可成《かなり》大きくて、廻りがずっと空いていた。本堂は随分古びていたけれども、中々しっかりしていた。前側の
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