贋紙幣事件
甲賀三郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)稀《たま》に
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)今時|他人《ひと》の
−−
一
稀《たま》に田舎に来ると実に好《い》いなあと思う。東京なんかに住まないで、こう云う田舎に住んで見たいなあと思う。空気が澄んでいるから空の色が綺麗《きれい》で、林があって、野原があって、牧場があって、静かでのんびりしていて本当に好い。東京からそう遠くない所にこんな好い所があるんだもの、日曜には活動なんか見に行かないで、空気の好い広々とした田舎へ来る方が、どんなに気持が好いか知れやしない。
中学にはいって始めての学期試験が間もなく来るので、うんと勉強しなくちゃいけない。臨時試験には算術と読方《よみかた》は十点だったけれども、英語が七点で、理科と地理が六点だった。だから学年試験は余程《よほど》しっかりやらなくちゃならないのだけれども、お母さんが、勉強する時にはウンと勉強して、遊ぶ時にはウンと遊びなさい。日曜は空気の好い郊外に出て、身体を丈夫になさいと云われたから、今日はこうして森春雄君と一緒
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