に田舎に来た。
 東京からそう離れてないと云ったけれども、これだけの道を、仮令《たとえ》途中は電車に乗るにしても、毎日通うのは大変だ。だから飛山《とびやま》君は偉いと思う。毎日この辺から学校に通っているのだから。
 飛山君は中学にはいってから始めて友達になった人だ。森君は小学校からずっと一緒で、とてもよく出来て、級長で通して来た、僕の大好きな友達だが、中学に来てもやっぱりよく出来て、臨時試験は皆満点だった。けれども中学となると、流石《さすが》に方々の小学校からよく出来るものが集っているだけに、森君に負けないような人も二三人ある。飛山君はその一人で、臨時試験はやはり皆満点だった。それに真面目《まじめ》でおとなしいから、僕は直《す》ぐ仲の好《い》い友達になった。
 今日は森君と相談して飛山君の田舎に遊びに来た。本当に淋しい道だ。家はチラホラあるけれども、しーんとしていて、人がいるのかいないのか分らない位、通る人にも滅多《めった》に会わない。東京の町とは大変な違いだ。
「ああ、可愛《かわい》い犬が来たぜ」
 森君はだしぬけに云った。森君は犬気違いだ。とても犬が好きで、犬とさえ見れば直《す》ぐ
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