るので、兌換券と云うのは、そこへ持って行けば金貨と兌換して呉れるからで、兌換と云うのは換える事だそうだ。あんな紙だけれども日本銀行へ持って行けばいつでも金貨と換えて呉れるから、それだけの値打があるので、贋紙幣だったら紙だけの値打しかないのだそうだ。だからそんなものを無闇《むやみ》に造って使われたら大変なので、重い罪にしてあるそうだ。この紙幣《さつ》の発行は日本銀行だけれども、拵《こしら》えるのは印刷局だそうだ。造幣局と云うのは、金貨や銀貨や銅貨を造る所だそうだ。紙幣《さつ》は贋《にせ》が中々出来ないように、紙から特別に拵えて、意匠やら模様やら色やら骨が折ってあるので、ちょっとした事では贋紙幣なんか出来るものではないそうだ。
 飛山君の家を訊いたら女の子が逃げ出したので、森君と僕とは又歩き出した。すると向うの方から白い犬が尻尾《しっぽ》を振りながら飛んで来た、見ると、先刻森君が脚の蝨《だに》を取ってやった犬だ。その犬の他に二三匹仲間の犬がいてしきりに、ジャレ始めた。
 森君は例の如く舌を鳴らして、他の犬をみんな呼び寄せたが、何と思ったか、一匹ずつ抱いては脚を上げて脚の裏を調べた。最後に一
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