古田は証拠を消す為に、先生から奪《と》った原稿を焼こうとしている所でしたから、もう一足遅いと先生の研究は永久に葬られた訳です。内野君は古田は人の目につかぬ所に原稿を隠しているから、彼を刑務所へやってから探すつもりだったらしいが、彼が焼き棄てようとは思わなかったのでしょう。もうお気づきでしょうが、内野君は即ち無電小僧です[#「内野君は即ち無電小僧です」に傍点]。私は[#「私は」に傍点]? 私は私立探偵[#「私は私立探偵」に傍点]です。先生に身辺を保護すべく頼まれたのでしたが、今考えて見ると、先生は私に清水を捕らえさすつもりだったらしい。紅茶に酔わされた為に、先生の目的も私の目的も達せられなかったのでした。多分親切からでしょうが、紅茶に催眠剤を入れた方は飛んだ罪作りの方です。
ではさようなら、お身体を大切に』
私読んでいるうちにほんとにびっくりしちゃったわ。なんだか内野さんの方の手紙を見るのが恐いようだったけれども思い切って開けて見たの。
『私の好きな八重ちゃん。
ご機嫌よう。相変わらずじれったいんでしょう。
私もお蔭で達者です。
私の事ももうそろそろ分かった時分でしょう。あの日
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