まる。とこういう計画だったらしいのです。ところが清水は来なかったのですから、無電小僧が起きてマゴマゴしようものなら、反《かえ》ってひどい眼にあったかも知れなかったのです。紅茶を飲んだのはあるいは幸いだったかも知れません。
 先生は古田が忍び込んで来たのをご存じだったのでしょう、思う存分探させて置いて、彼が出て行くのを見届けてからあの巧妙な自殺を遂げられたのです。私はあの日、内野君の頭脳には感服しました。内野君がいなかったら、私にはあの日に解決がつけられなかったかも知れません。それから内野君が脱兎《だっと》の如く天井裏へ駈け込んだ鋭さ。彼は先生の研究の最後の結果が天井裏の電気仕掛けと共に隠されている事を咄嗟《とっさ》に見破ったのです。それから驚いたのは診察室の窓の事で先手を打った事です。あれは内野君が開けて置いたのです。それを私にかぶせたのは一つには先手を打って私にいい出す機会を失わせ、一つには私を遠のけて、天井裏のどこかへ一時隠した原稿をゆるゆる取り出すつもりです。私はわざとその手に乗って、警察へ行く途中から逃げ出したように見せ、刑事と共に古田の家へ行きました。これは大変好結果でした。
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