かったのです。これがまああの古田の身の上に四度まで起こった怪事件の真相です。その後無電小僧は原稿の出所を先生の所と悟りました。つまりこうして研究の原稿が古田と無電小僧と先生――最後の方ですね――との三人に別れてしまったという訳です。そこで無電小僧は虎穴《こけつ》に飛び込んだのです。先生の所にいれば、隙があれば先生の持っている分を引きさらはうし、計事《はかりごと》で古田を誘《おび》き寄せて、彼を脅して原稿を出させる事も出来ます。
で、ある日、無電小僧は古田に清水の偽手紙を書いて、先生の書斎の本箱の中に最後の分が隠してあるから、奪って来いといったのです。そうして置いて彼はそっと診察所の窓を開くようにして置いたのです。古田が来れば捕らえて、脅して原稿を吐き出させるつもりだったのです。ところが幸か不幸か、その晩ある人の術策によって、紅茶の中に麻酔剤を入れられて、前後不覚に寝かされてしまったのです。
先生はあの晩に清水を誘き寄せて、話の最中に、電灯のスイッチを切って、部屋を真っ暗にすると共に、例の清水の指紋のついている文鎮を自分の頸に落として自殺を遂げる。清水があわてて逃げ出す拍子に私達に捕
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