ニッケルの文鎮
甲賀三郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)頂戴《ちょうだい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一晩|拘留《こうりゅう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「どんな風だか」は底本では「どんな風だが」]
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ええ、お話しするわ、あたしどうせお喋りだわ。だけど、あんたほんとに誰にも話さないで頂戴《ちょうだい》。だってあたし、あの人に悪いんですもの。
もう一年になるわね。去年のちょうど今頃、そうセルがそろそろ膚《はだ》寒くなってコレラ騒ぎが大分下火になった時分よ。去年といえば、随分嫌な年で、新聞には毎日のように、自殺だの人殺しだの発狂だのって、薄気味の悪い事ばかし、それにあんた知ってるでしょう。妙な泥坊の事、ね、そら希代《きたい》に大きな宅《うち》ばかり狙って、どこから入ってどこから出たのやらちっとも分からないのに、いつの間にか金目のものがなくなっていたり、用心すればする程面白がって、思いがけない方法で忍び込んだりして、どこからでも入るからまるでラジオの様だというので、新聞に無電《ラジオ
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