いとね。何てずうずうしいんでしょう。あたし達三人また検事さんの前に呼ばれて清水の事で調べられたわ。
『お前は被害者が清水宛てに手紙を出した事を知ってるか』って聞かれたわ。
 あたしそんな事知らなかったの。下村さん達も知らなかったわ。先生の手紙は大抵あたしが出しに行くのですから、あたしならまあ知っている訳だわ。
 清水がこういうんですって。昨日の昼先生から秘密の用談があるから、今晩遅くに来てくれという手紙を貰《もら》ったのですって、それで夜出かけたけれども、先《せん》に一度銀行の通帳の事で一杯喰わされた事があるので、何となく気が進まず、宅《うち》の前まで来てそのまま帰っちゃったんですって。だって可笑しいでしょう。先生の手紙が通帳の一件とは何の関係もないし、それに先生の手紙は破いてくれとあったのでその通り破いたのですって、怪しいわね。それに研究の事をいうと真っ蒼になったんですもの。何ていったって、清水のした事に違いないじゃありませんか。だけどどうしても白状しないのよ。
『甚《はなは》だ差し出がましいようですが』下村さんがだしぬけに検事さんにいったの、『本件には一、二矛盾した所があるように思
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