わが心 なにゆゑに なにゆゑにかくは羞ぢらふ……
むなしさ
臘祭《らふさい》の夜の 巷《ちまた》に堕《お》ちて
心臓はも 条網に絡《から》み
脂《あぶら》ぎる 胸乳《むなち》も露《あら》は
よすがなき われは戯女《たはれめ》
せつなきに 泣きも得せずて
この日頃 闇を孕《はら》めり
遐《とほ》き空 線条に鳴る
海峡岸 冬の暁風
白薔薇《しろばら》の 造化の花瓣《くわべん》
凍《い》てつきて 心もあらず
明けき日の 乙女の集《つど》ひ
それらみな ふるのわが友
偏菱形《へんりようけい》=聚接面《しゆうせつめん》そも
胡弓の音 つづきてきこゆ
夜更の雨
―ヱ゛[#底本はヱに濁点がついた1字]ルレーヌの面影―
雨は 今宵も 昔 ながらに、
昔 ながらの 唄を うたつてる。
だらだら だらだら しつこい 程だ。
と、見るヱ゛ル氏の あの図体《づうたい》が、
倉庫の 間の 路次を ゆくのだ。
倉庫の 間にや 護謨合羽《かつぱ》の 反射《ひかり》だ。
それから 泥炭の しみたれた 巫戯《ふざ》けだ。
さてこの 路次を 抜けさへ したらば、
抜けさへ
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