詩集・在りし日の歌
亡き児文也の霊に捧ぐ
中原中也
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[表記について]
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在りし日の歌


含 羞《はぢらひ》
  ――在りし日の歌――

なにゆゑに こゝろかくは羞《は》ぢらふ
秋 風白き日の山かげなりき
椎の枯葉の落窪に
幹々は いやにおとなび彳《た》ちゐたり

枝々の 拱《く》みあはすあたりかなしげの
空は死児等の亡霊にみち まばたきぬ
をりしもかなた野のうへは
あすとらかん[#「あすとらかん」に傍点]のあはひ縫ふ 古代の象の夢なりき

椎の枯葉の落窪に
幹々は いやにおとなび彳ちゐたり
その日 その幹の隙 睦みし瞳
姉らしき色 きみはありにし

その日 その幹の隙《ひま》 睦みし瞳
姉らしき色 きみはありにし
あゝ! 過ぎし日の 仄《ほの》燃えあざやぐをりをりは

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