はそれを見るに忍びないので二階へ駆け上がったがどうも気にかかって堪らないので二〇分ばかりの後、そっと下りて茶の間を覗いて見た。すると驚いたことには何もかも綺麗に片づけてあるのにこわれた茶碗とお茶漬だけは、散乱したままそっと宝物の如く大切に保存されてあるのだった。これには少し弱った。一刻もこんな穢らしいものを捨てておけないと私は考えたが、今さら掃除を命じるのはくやしいから、掃除位なんだと私は叫んで箒を持ってめし粒を掃き寄せ、襖の穴へは紙を貼った。流れ込んだ茶漬は仕方がないからそのまま封じ込めてしまった。
その後私はその襖を見るたびにこの中には、あのめし粒が入っているんだなと思うのである。
まずそんないろいろの悩ましき障害から、私は春になったら花を描いてみよう、桃のある間にあすこへ出かけて二、三枚制作してみようなど数年来同じことを考えていながら、ただそわそわとしてまだ一枚の春らしい絵も作らず、今年こそ今年こそと思いつつこの季節を逃してしまうのである。
ようやくにして多少の猥褻の気を含める桜の花も散りはて、柿の若葉が出揃い、おたまじゃくしが蛙となって鳴き出す頃、初めて私の神経がややも
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