との鞘へ収まろうとするのである。もう世の中全体の浮気も一段落を告げ、もはや何を見ても満目青いことである。それからだんだん自然の青さと暑さは増すばかりだ。
 この青さと暑さが私にとってよい合薬だ。私は私の故郷へでも帰った心地がする。もう電車や汽車に乗っても、酔っぱらった青年団や旗を持った運動会にも出会わない。まず家を出て仕事をして帰るまで、さほど機嫌を損じることもない。まず五月の風景は私の野外における仕事始めのかき入れ時である。
 ところが多少困ることにはこの安心な初夏風景は絵の構成上、色彩に不足を感じることである。すなわちただ一切が緑であるから。
 それでようやく辛うじて、空と水とによって画面の色彩に変化を保たせようとするのである。絵描きに限らず人は何となく、夏になると水のそばへ行きたがるのもあるいは同じ要求からかも知れないと思う。
 でもまだ初夏には若葉のよき階調があるけれども、もう梅雨を過ぎるといよいよ緑は深くどす黒く、ただもう鬱蒼として黒いのである。したがって画面はすこぶる単調を免れない。
 しかしながら私はそれで満足して、静かに日傘の下で安心して仕事をつづけることが出来る。

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