めでたき風景
小出楢重
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)亭《ちん》が
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)十|間《けん》ばかり
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]
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めでたき風景
奈良公園の一軒家で私が自炊生活していた時、初春の梅が咲くころなどは、静かな公園を新婚の夫婦が、しばしば散歩しているのを私の窓から十分眺めることが出来た。彼ら男女は、私の一軒家の近くまで来ると必ず立ちどまる。そこには小さな池があり、杉があり、梅があり、亭《ちん》があるので甚《はなは》だ構図がよろしいためだろう。
そして誰も見ていないと思って彼ら二人は安心して仲がいいのだ。即ち細君を池の側へ立たせて、も少し右向いて、そうそう少し笑って見い、そやそや、といって亭主はピントを合せるのだが、私はそれらの光景をあまり度々《たびたび》見せられたためか、どうもそれ以来、写真機をぶら
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