車や電車は浮上がり伸出した人達でもってすでに一杯となっているし、往来へ出ると御馳走の嘔吐が吐き散らされているし、浪花踊が始まっていたり、芦辺踊の紅提燈がずらりとお茶屋の軒に並んでいたりするのである。すると私はちょっとカン※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]スを枠へ貼ってみたり、あるいはちょっと外出してみたり、帰ってみたり、またちょっと出てみたり、また帰ってみたり、あるいは「どうしたものか知らん」「何んぞ」「どないぞ」「何んとか一つ」といった言葉を繰返しながら、すこぶるよい天気の一日を殆ど中腰となって、動物園の狐が檻の中でする如く狭い部屋の中をぐるぐると巡回するのである。こうなるとしまいには何とも知れない憂鬱が込み上がってくるものだ、わけのわからない癇癪が立ちのぼってくる。
私はこんな状態になったある日のこと、とうとう私は妻君にちょっとしたいいがかりをして、食べていたお茶漬を襖へ向かって投げつけたことがあった。襖は破れて茶碗は半分、唐紙へ食い込んだ。その穴から襖の中へお茶漬が半分流れ込んであとの半分は畳の上へ散乱したものである。散乱したお茶漬というものは随分穢いものだと私は思った。私
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