、私の頭の上に他人の尻の大写しが重ねられたりする事も風情ある出来事である。そしてそれらは西洋人にはちょっと諒解出来難い風情《ふぜい》である。
 昔、私は一度それは田舎の風呂屋で、甚だ赤面したことを覚えている。美校を出て間もないころだった。私たち三人のものが、仕事をしまうと汗を流しに毎日出かけたものだった。男湯と女湯との境界に跨《またが》って共同の水槽があった。私は何気なくその水面を眺めながら洗っていると、そこへゆらゆらと美女の倒影がいくつもいくつも現われるのであった。私は友人を招いて水面を指した、彼はなるほどといってまた他を招いた、三人は折重って倒影の去来を楽しむのであったが、時々水を汲《く》む奴があるので美女は破れて皺が寄るのであった。漸《ようや》くにして波静まると思えば倒影は立ち去って無色透明であったりした。私たちは毎日水槽の一等席を争ったものだったが、数日の後、水槽の真中に一枚の板が張られていた。おや、変なことになったと三人が思っている時、うしろから三助が旦那、あまり覗《のぞ》かぬように頼んまっせ、あんたらの顔も向う側へよう映《うつ》ってまっさかいと注意した。なるほどわれわれはう
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