》の三味線等において、まずよくもあれだけ温気が役に立ったものだと思って感心している。
しかしそれは万事が過去である。現代の温気の世界は何を創造しつつあるか、まだよく判然しないけれども、先ず河合《かわい》ダンスと少女歌劇と、あしべ踊りと家族温泉と赤玉女給等は、かなり確かな存在であろうと考える。
北極がペンギン鳥を産み、印度が象を産み出す如く、地球の表面の様々の温度がいろいろの人種や樹木、鳥獣、文化、芸術、人の根性《こんじょう》を産むようであるが、この関西|殊《こと》に大阪の温気によって成人した大阪人は、まだわれわれの窺《うかが》い知ることのできない次の芸術と特殊な面白い文化を産み出しつつあるに違いないことだろうと思っている。
かんぴょう
家族が病気で大騒ぎの時、いちじく印の灌腸薬を書生M君に大急ぎで買いにやりました。私が「オイ灌腸はまだか、早く早く」と待ち兼ねている時、M君は「いちじく印のものはありませんでしたけれども」といいながら一束のかんぴょうを携げて帰って来ました。それはかんぴょうではないかと私は怒りました。八百屋のおやじもおやじです。病人も痛む腹から微苦笑をかすか
前へ
次へ
全237ページ中29ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング