《けいこ》できたえ上げた腕前をば、その日からさっぱりと引下げに取りかかったりする傾向もないとはいえない。またそんな時代に一人上等の腕前を発揮していたりすると、何か、よほど汚なきものの存在ででもあるかの如くぼろくそに叱られつづけたりなどする事もあるので、多少気の強い画家であっても、全くそのうちには気が悪くなって行くらしいのである。
 折角花道から、苦労しながら仁木《にき》弾正《だんじょう》がせり上って見ても、毎日毎日大根|引下《ひきさが》れ、と叫ばれて見ては、あまりいい気はしないだろう。
 あるいは実在を穴のあくほど見つめて描く事でなくては画家でないというと、折角昨日まで鼻唄まじりで陽気なタブローを作り上げていた才人までが、急に一個の林檎を眺めて、涙を流して見たりする事もある。
 あるいは、今や時代は野獣である、何がなじっと落着いていては画家に非ずと勇気づけられたりすると、何が何だかよくはわからないながらも、虎は何処《どこ》だと叫びながら、尻をまくって取敢《とりあ》えず飛び出して見たりする。
 君々、虎は後ろですよと注意されて喫驚《びっくり》して見たりする事もないとはいえない。あるいはじ
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