、今でも私はあの芸当を好む。
 それと、私は、曲馬団が吹き鳴らす金色のラッパの音がとても好きなのだ。私はあらゆる音楽の中で、極端にいえばあのラッパの響きを好むといっていいと思う。あの調子の破れたような金属性のかすれ声はエキゾチックな泣き声である。
 私が巴里《パリ》の客舎にいる頃、いつも町|外《はず》れの森の中から、この曲馬団のラッパが毎日響いて、私の帰郷病を昂進《こうしん》させた。私はもし何か、長唄《ながうた》とか清元《きよもと》、歌沢《うたざわ》のお稽古《けいこ》でも出来るようなのんきな時間があったとしたら、私はこのラッパの稽古がして見たい。

 自分の親の醜態はあまり見たくないものだが、私の父は素人浄るりの世界では相当の位置にあったものと見えた。会がある度《た》びに母と共に、私は出かけねばならなかった。
 人目につく高い処へ父が現れるだけでもきまりが悪いのに、その父が女の泣く真似《まね》をして何んともいえない渋面《じゅうめん》を作って悩むのだから、子として全く私はやり切れなかった。で、浄るりの会と聞くと憂鬱《ゆううつ》になった。しかしながら、燭台の焔《ほのお》がほろほろと輝き大勢
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