んざしや、金モールの房《ふさ》のある幕の端がだらだらとぶら下って、安い更紗《サラサ》模様のバックが引廻わされている。
 私がもう写生帖を懐中するだけの大人となってからの事だ。私の弟が薬剤師の試験を受けるためにとっておいた受験証をば私は預かっていた。それをその写生帖の一頁へはさんでおいた事をうっかりと忘れて私は、人ごみの中へ立って、ろくろ首を写生した。
 その翌日弟の試験日だ、私はそれを落した事を初めて知ったが、もう千日前の泥道にさような小さいものが存在すべきはずもなかった。弟はとうとう一年間遊んでしまったという、私の大失態がろくろ首から、醸《かも》し出された。
 曲馬団の娘や、女奇術師の顔や、女相撲取りの顔にもろくろ首と共通せる妖気は漂うていた。白粉《おしろい》が強いので二つの眼が真黒の穴とも見えた。殊に曲馬団では、殆《ほと》んど肉シャツ一枚で、乳がその形において現れ、彼女らは皆黒か赤のビロウドの猿股《さるまた》を穿《は》いていた。それが、固く引締った下から太い股《もも》が出ている処に胸のどきつく美しさがあった。それが針金の上で、あるいは空中の高い処であらゆるポーズをして見せるのだから
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