ある。
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それは私の滞欧中の手紙をみても、その間に考えたことについて考えてみても、今思うとそんな馬鹿なことがあるものか、それは少しおかしいぞと思えることばかり多く書いているようだ。それでまったく自分自身もはなはだ頼りにならないものだと思い、信用の出来ないものだとつくづく考えられる。まったく私は何かにつままれていたらしいようでもある、心細い限りである。だから今洋行中の手紙などをみると恥しくて身の毛がよだつ思いがする。
そのくせ私はいったん旅に出たその日から私は私自身の精神状態については、大丈夫か、つままれてはいないか、正気か、逆上していないか、帰郷病に罹ってはいないかと常に調べていたものだった。私は大丈夫だ正気だ[#「正気だ」は底本にはなし]と答えていたが、それがやはりどうやら間違っていたらしい。いったん船に乗り込むと同時に私はもはや常の心ではなかったものらしい。
それはまったく私が旅馴れないのと私の洋行以前の日常生活があまりに旧日本的であったためその生活の急激な変化が一つの原因でもあったかも知れないと思う。私のそれまでの生活は不精髭を蓄えて懐手をして、四畳半の座敷で
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