れらの一語で何もかもがいいつくせるので、大変便利だから変だとは思いながらもつい使ってしまうのである。
ややこしいという事を東京流に翻訳して見ると、この語の中に含む真のややこしさを表すだけの適当な言葉が見出せないのである。その意味は複雑というだけでもなく、ごたごたしているというだけのものでもない。西だか東だかあれかこれか、ほしいのか厭《いや》なのか、甚《はなは》だもつれている処の、こんがらがった意味があるのである。まだその他あの男女の間が頗《すこぶ》るややこしい[#「ややこしい」に傍点]とかこの品物が本ものか偽物か甚だややこしいとかいう事もいえるのである。怪しげな男の事をややこしい男ともいう。あるいは六つかしき事にも用い、恋愛が破れかかる時にもややこしい[#「ややこしい」に傍点]と称し、成立しかかる時にもややこしい[#「ややこしい」に傍点]という。あるいはいいのか拙《まず》いのかわからぬが多少下手に近い絵の前へ立った時、ややこしい絵だとも評するし、髭面《ひげづら》の気ぶしょうな男の顔を見てややこしい[#「ややこしい」に傍点]顔してますといったりする。
ぞける[#「ぞける」に傍点]、と
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