ク子もまたこの足に迷って死んだ。或夜、裏長屋から一本の蛸の足を盗んで帰る途中、長屋の井戸の屋根が腐っていたため、踏み外《は》ずして落ち込んでしまった。その時彼女は臨月だった。
そのもの音に驚いた車屋のAが寒いのに飛び出して、つるべによって助け上げようとしている時、四、五日前から喧嘩《けんか》していた仲仕《なかし》の細君がまた飛び出して来た、そこで互に感じが悪いというので二人とも家へ引込んでしまったために、その翌朝フク子は蛸の足と共に浮き上っていた。怖《おそ》るべきは足の誘惑である。
もっさりする漫談
関西には形容すべき言葉にして、特に訳のわからない複雑な感情と意味を含む処のものがかなりあるようだ。例えばややこしい[#「ややこしい」に傍点]とか、ぞけている[#「ぞけている」に傍点]、うっとうしい[#「うっとうしい」に傍点]、しんどい[#「しんどい」に傍点]、もっさりしている[#「もっさりしている」に傍点]、はでな事[#「はでな事」に傍点]とかいう風な言葉である。勿論《もちろん》日本の標準語の中へは這入《はい》りそうにもない地方的なものではあるが、慣れているわれわれの中ではそ
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