てこずりときまると、今度こそはとまた次の仕事の暗にふみ迷うのであります。
 昔の名工の話などにはしばしば、仕事のうちは女をつつしみ、沐浴して神に祈るようでありますが、まったくその仕上げについて一生懸命であればある程、こんな有様とならざるを得ません。だから今もなお役者、相撲取、博奕打ち、相場師、泥棒、芸妓、など一寸さきの気にかかる商売をするものに迷信家が多いようであります。
[#地から1字上げ](「美の国」大正十五年三月)

   蛸の足

 男のズボンの膝《ひざ》が出ているが如く日本女の膝は飛び出している。幼時から折り畳んでばかりいたのでさようなくせがついたのだろう。しかし近頃はだんだんと足は延びつつ短かいスカートから現れ出て来た。
 ところで、その現れ出した足の発散する誘惑は昔のくの字型に比して著るしいかというと、私は決してそうとは思わない。
 近代の足はすでに、顔であり、手の一種である。その上、皮膚そのものの露骨さを、手袋の如く、うすき絹を以て包んでいるが、昔のくの字は、重く厚き裾《すそ》の中に隠れていながら、かの浮世絵に見る如く風に翻える時、むしろ深刻なものを発散すると私は考える
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