結実が得られないのであるならば、勇ましくまともにこの人生の危機にぶつかる態度をもって、しかしそれだけにつつましく知性と意志とを働かせつつ立ち向かっていくべきであろう。
 そこで現代の若い女性の対人態度の二重性が生じるわけである。一方には愛を求めて、しかし一方には愛を恐れて。がこの二重性を一つのポーズに持ちこなすことは、現代女性の知性の働きであろう。私たちは求愛の表情の外に現われているようなポーズはもとよりとらない。がそれかといって、冷くすましていられるのもとりつくしま[#「とりつくしま」に傍点]がない。求める心を内に抱いて、外はいくらか結晶性なのが――という意味は化合するまでには溶解することを要するという意味なのが相応しい気がする。それは「結ばれやすい」という性質は一方また「離れやすい」という性質にもなるので感情過多いわゆる水性ということは人生の離合の悲劇を避けるためには最もつつしまねばならぬことだからである。
 それでは如何なる場合に合し如何なる場合に離れるべきか。そうした離合の拠るべき法則というものはないのか。それはごく一般的にいえば、共通の理想、主義、仕事、ないしは「道」あるいは
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