るなかれ」とか、「なんじの心を浮世に誘うがごとき友を捨てよ」とかいうような言葉は、私に首を傾けさせました。どうもハイウェーでないように思われました。フランシスでも隠遁はしたかったけれど、忍耐して浮世に伝道しました。私は「私のような汚れたものは……」といって身を隠すのでなくて、「そんな人々とは……」といって隠れるのはハイウェーではないように感じます。この混乱した時代に、もし経済の心配さえなくば、だれか静かな「隠れ場所」を求めぬものがありましょう。私たちには人を選んで交わりたいという、ミスアンスロフィックな感情が去りません。が私はこれをシュルドとしていつも禁じています。
私は一週間すれば別府を去って、妹とも別れて、この夏はたぶん倉橋島の音戸という広島湾内の小島にて暮らすようになりましょう。私はそこでしばらく考えさしてもらって、私の心を整えたいと存じます。夏には正夫さんと会えるかもしれないので、たいへん悦んでいます。秋からは上京します。そして久しぶりにあなたにもお目にかかれ、朝夕往復して生活を共にすることができますならば、どんなに嬉しいことでしょう。ただ、私は秋までに何か恐ろしい運命が、私
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