た時私は泣きました。でも考えてみて下さい、何もかも悲しいではありませんか。窓の外は嵐でした。そして青い遠い空には星がふるえていました。私はこの頃しみじみと星が親しくなつかしくなりました。今夜も天の甘美と遠い調和と魂の休息とが思われて、そこはかとなき永遠へのゼーンズフトを感ぜずにはいられませんでした。そして「ああ病気は癒らなくてもいい」と思いました。そして手を合わせて祈りました。
なにとぞいつまでも私を愛して下さいまし。私はあなたの過去についてほんの少ししか知りませんけれど、あなたは孤独な淋しい少年時代を送った人のような気がしてなりません。そして今あなたの住んでる家庭はあまり温かな住み心地よきものではないのですねえ。なにとぞ悲哀に耐えて他人を愛して生きて下さい。あなたの芸術的天稟と盛んな、謙遜《けんそん》な、研究心と深い微細な感情とはあなたを大きな器にするに相違ありません。私はあなたは大学を出る頃にはすでにひとかどの学者になるだろうと思われて非常にプロミッシングな期待を置いています。私はあなたの未来に祝福を送ります。
小さな乾いた青い花の封じ込まれたお手紙は懐しく読みました。そのよう
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