なことをなさるのもあなたには似合わしく感ぜられます。荒々しい私の他の友だちには、そのようなことのふさわしきものはほとんどありません。じっさい私はあまりにワイルドな人々の間にのみ住み過ぎましたように思われます。私はあなたのやさしき性格をめでました。そしてあなたの少年時代についてもっと知りたき心を誘われました。ハインリッヒの青い花の夢物語や聖母崇拝の祈りの歌やみな私の胸になつかしき響きを伝えました。私はファウストのなかのグレートヘンがマリヤの石像の前にひざまずいて「マリヤ様、わたしはどんなにひとの罪を責めることの厳しかったことでしょう」などと悔い祈るシーンを思い浮かべつつあなたのお手紙を読みました。あなたは忙しいのによくもたびたびお手紙を下さいます。いつも恵みのごとく悦んで読みます。私は明日いまいちど診察を受けて今後の養生の方針を定める気です。なにとぞ不幸なる私のために祈って下さい。私には人生に絶望することは宗教的の罪悪です。私は不幸のなかにいかにして人生を祝福すべきかを学ばねばなりません。
 私はとても学校生活の堪えらるるほどの健康にはなれそうに思われません。学者にも芸術家にもなれそうに
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