がますます学術的に精密となり深奥となりゆくのを心からお祝いします。では今日はこれでよします。
 私からはたびたび便りをしなくても、からだのいい貴殿からはなにとぞたびたび便りを下さい。僕は君の手紙を読むのはたいへん好きなのですから。そしてその手紙のなかにある教養的な、君でなくては書けない、美にまで解かされた理智的空気に触れることは僕にとってよい刺戟《しげき》でもあるのです。僕が便りを怠るのは真実にからだのせいなのですから、あしからずゆるして下さい。
 君の歯の痛みが早く取れるように祈ります。ではお大切にいずれまた。
[#地から2字上げ](久保正夫氏宛 二月二十六日。明石より)

   有島武郎の訪問

 おはがき拝見しました。二十日にいらっして下さるそうでうれしく思います。ずいぶん長い間御無沙汰しました。ようやく数日前から手紙も出すようになったようなわけなので御無沙汰をお許し下さい。あなたは健《すこ》やかで仕事に励んでいられるそうで喜びます。私は一時はずいぶん苦しみましたが、この頃は熱もなく、気分もよくなりましたから喜んで下さい。ただずいぶん長らく寝たきりだったので、頭を枕から離すと眩暈
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